たねの里「Noya Village」× 福岡移住計画 新プロジェクトスタート

ーこれから先、わたしたちの生活から日本古来の野菜がなくなってしまうかもしれない。そんな未来を前に今わたしたちにできることは何だろう。(2018年5月21日更新)

固定種という種から生まれた野菜があることをご存知ですか?
その固定種野菜を育て、守っている大分県九重町のNoya Village福岡移住計画(HOOD天神)との共同プロジェクトが5月よりスタートすることになりました。

今、わたしたちが考える「食」のこと、「たね」のこと

■Noya Villageとは
Noyaは、湯布院(大分)から電車で13分のところにある「野矢」駅周辺の静かな里山地域。
そんなNoyaの未来を考え、固定種の「たね」を自家採種することで守りながら、自給自足できるようにしていく取り組みが『Noya Village』です。

<Noya village(運営者:Noya Design Project):http://noya-village.com/

■固定種野菜とは
野菜のもとを辿ると、その全てが種にたどり着きます。
そしてその種には、「固定種」と「交配種(F1種)」の2種類が存在するのです。
私たちが普段の生活の中で口にしているほとんどの野菜は、「交配種(F1種)」と言われ、性質の異なる系統の掛け合わせによって採られた雑種です。この交配をいくつも繰り返し生まれているのがF1種の野菜になります。
一方で、Noya Villageで栽培をしているのが「固定種」と呼ばれ、よくできた野菜を選んで種を採り、その種を蒔いて新たに野菜を育てるという工程を一つ一つ繰り返してできる種です。そのため採れる量も限られています。

 

量産が可能な交配種(F1種)と異なり、固定種の野菜はできた野菜から採取するため、種によって色や形、大きさ、さらには生育のスピードさえも変わってきます。多様な変化を受け入れながら種を守り、育てていく。そうやって育てられた野菜は、私たちが一般的に食べている野菜と比べて味が濃かったり、とびきり辛かったり、個性豊かな野菜が多く存在します。今の私たちがよく口にする野菜は、本来の野菜よりも味も栄養価も大きく失っているようです。

九州(大分)で「たね」を守ること、歴史を紡ぐこと

 

今回共同プロジェクト実施にあたり、『Noya Design Project』の中心メンバーである日野克哉さんを訪ねて、大分県九重町の野矢地区へ訪れました。

 

もともとは兼業農家として農業に携わっていた日野さん。
5年前に専業で農業と向き合いたいと決意し、様々な勉強をする中で「固定種」と出会ったそう。

 

「昨年取った野菜の中から、よくできたものを選び種をとり育てて苗にします。種類によっては花粉なんかですぐに違う種類と混ざってしまうものもあるので、種を隔離して育てたりもするんですよ。そうやって苗になるまでに、1ヶ月のものもあれば、3ヶ月かかるものもある。育つスピードも、出来上がる形や大きさもそれぞれなのが固定種ならではの面白さだと思います」

 

 

「固定種の世界はとにかく奥が深い。まだまだ知らないことも、日々種と向き合って学ぶことも沢山あります」

 

何もせずに過ごしていると固定種の種はいつか消滅してしまう。日本古来の野菜がなくなってしまい、「あの時食べておけばよかった」と思う日が来る前に、私たちができることをやりたいという思いで、活動を始めたそう。

 

 

−そして今年、このNoya Design Projectを福岡市天神のこのHOOD天神でもスタート。

◎「たね」の勉強会、体験会
◎野矢のまち、固定種野菜を体験できるNoyaツアー
◎「食」「たね」について考えるWEB連載
◎Noya Supporter
など

より多くの人に固定種野菜のことや種のことを知ってもらう機会をこのHOOD天神からも創出していきます。

■Noya Supporterとは
Noya Villageでは、新しい形の農業体験ツアーを始めます。

里山の自然に触れながら、自ら食べ物を作り、タネを採ることで、タネや野菜、日本の食文化や農業を学び、日々の暮らしが豊かになればという思いを込めて、
Noya Supporterとして、タネの自給率を高める活動に参加してくださる方を募集いたします。

<Noya Supporter 申し込み方法>
一口12,000円(税込)で、4回分の体験に参加できます。
サポーターには、Noya Passportをお渡しいたします。
参加ごとにもらえるスタンプを集めて、美味しいお土産や固定種野菜の種をゲットしましょう!

<第一回目>
日程:5月23日(水) or 5月26日(土)
内容:日本人の主食である米から、体験がスタート。カエルやタニシが住む田んぼで、田植えをし、午後は畑を耕起し芋の種まきをします。

その他体験スケジュールはこちら
お申し込みはこちらから。

【5月21日現在】
下記イベントは終了いたしました。
ご参加誠にありがとうございました!

固定種野菜を知ってもらうイベントを開催します。

 

Noya Village 種のお話し会 – 固定種野菜を知ろう-
固定種野菜のことを知り、実際に体験をしてもらうことができるイベントです。

<内容>
・固定種野菜について
・食について
・実際に固定種野菜を食べてみよう
<日程>
2018年5月9日(水)19:30〜
<場所>
HOOD天神
<参加費>
1,500円
<申し込み>
下記リンクから事前にお申し込みをお願いいたします。
https://www.street-academy.com/myclass/35549

固定種野菜を知らない方にも身近に感じてもらえるようなイベントです。

・「食」に興味のある方
・自分の「食」を見つめ直したい方
・固定種に興味のある方
など

ご興味のある方は、ぜひご参加ください!

 

【編集後記】辛い大根を食べて思うこと

ひょんなきっかけで昨年秋、日野さんご夫婦に出会い、固定種野菜のモニターを体験させてもらった時、私は初めて「固定種」という存在を知り、これまでの野菜の概念を覆されて驚きの連続でした。

「大根がカッと辛いのは、寒い冬に体を温めるため。昔の人は、そうやって生き物本来の力を借りながら一緒に生きていたんですよね」と日野さん。

もともと大根の辛さが苦手な私でしたが、せっかくだから固定種野菜の大根の辛さを体験してみようと、その晩、いただいた大根をそのままかじってみることに。

すると、やはりピリっと辛い!だけどじわじわと喉のあたりから熱くなるのを感じ、これが野菜の本当の力なんだと思ったのと同時に、その辛さがやみつきになり、最後まで美味しくいただきました。

私たちが知らない、あるいは忘れてしまった野菜の本来の味や香りに体感することで、自らの「食」、そして「生きること」を考えるきっかけになるのではないでしょうか。

「ハウスに行って作業をするので、ここで!」と見送ってくださった日野さんを背に、その日見聞きしたことを思い返しながら、これから始まるこのプロジェクトに心を躍らせながら、帰路につきました。


どこにでも食べ物が溢れ、たくさんの選択肢から選択をすることができる時代に生まれた私たちだからこそ、「食」と向き合い、私たちにできることを小さくでも行っていくことが必要なのかもしれません。

そしてそのきっかけを、固定種野菜とともにこのHOOD天神から、一緒に考えていけたらと思っています。

 

文・写真/脇山理子
(※写真:一部日野さんよりご提供)