Vol.06 〜身体から心から、元気になる時間を〜
薬膳サロン
Venus Blu(ウェヌス・ブルー)
田邉 久美子さん
透明のポットにお湯が注がれると、ゆっくり開いていく凍頂(とうちょう)烏龍茶の茶葉と、水中を舞うキンモクセイの花びら。
その幻想的な様子に見惚れていると、聴こえてくる久美子さんの声。
「これは、身体が冷えがちな現代の私たちにおすすめのお茶ですよ」
今回お話を伺ったのは、薬膳サロンを主催する Venus Blu(ウェヌス・ブルー)田邉 久美子さん。
「誰かと会って話したり、美味しいものを食べるだけで幸せを感じることがあります。そこに薬膳という漢方の知識を取り入れることで日頃の疲れを癒し、身体から心から元気にしたい」
そんな想いを抱いている久美子さんは、和食だけでなくフレンチのレストランと共同でメニューを開発したりイベントを行ったり、薬膳の可能性をもっと多くの人に感じてもらえるよう、活動しています。
お話していると、つい色々なことを相談したくなってしまうような雰囲気を持つ久美子さん。その魅力はどうやって作られるのでしょうか。そのヒントをもらうべく、お話を伺ってきました。
1.毎朝1分間、自分の身体に想いを馳せてみる
久美子さんは朝、目覚めて顔を洗うついでに顔色をチェックします。
「目は腫れぼったくないかな?」
「むくんでないかな?」
そしてお水(もしくはお白湯)を1杯飲みながら…自分の今の身体に想いを馳せます。
「寝覚めは良かったかな?」
「胃はもたれてないかな?」
「昨日、少し頭が痛かったけど治ったかな?」
1分くらいの短い時間、昨日と今日の違いを比べてみて、そこからお茶を作ります。
例えば、なんだか今日は手足が冷えるなあ…と感じたら、紅茶にキンモクセイやシナモンを入れたり、喉が少し乾燥しているなあ…と感じたら、カモミールにはちみつを合わせたり。
「自分の体調は、毎日変わります。少しの変化に気づいてあげて、放っておかないことが大切」
実は久美子さんが薬膳を始めたのは、ご自身が入院したことがきっかけです。
大学卒業後、客室乗務員、日本料理店の女将、美容室のコンシェルジュと、華やかながら不規則で体力勝負の職業についていた久美子さん。30歳を過ぎると階段を上がるのにも息切れしたり、頭痛に悩まされることも。
不調を放っているうちに無理が祟って、入院。退院後も医師から、一生薬を飲み続けなければならない、と言われる程でした。そんな時に出会ったのが薬膳の考え方。学校に通い、食養生を続けました。
継続しているうちに、医師から「薬を飲まなくてもいいよ」と言われるほど体質が改善したのだと言います。すごい変化ですよね。
私たちは、日々の生活の中でどれくらい自分の身体の状態に耳を傾けられているでしょうか。何か大きな一歩でなくても、毎朝1分だけでも自分に意識を向けてみて、身体の声を聞いてみることが大切だなあ、と感じました。
2.夕食に“プチ薬膳”という意識を。
“身体は、食べたもので作られる”と言われますが、情報がたくさんあふれている現代、糖質・塩分・コレステロール値…色々なことを考慮して献立を考えるのはとても大変!
久美子さんは「夕食に”プチ薬膳”」という意識でいるそうです。
“薬膳”と聞くと漢方とか生薬とか…なんだか特殊な食材を使って難しそう…!というイメージが先にきてしまいますが、実はそうではないそうです。
「食材全てに効能があるので、特別な食材を使わなくていいんですよ」
例えば、ほうれん草やにんじんは“血”を作る働きが期待できる。鶏肉は消化吸収が良く、お腹を温める、かぶは胃腸の調子を整える…といった具合です。
食材には薬と同じような効能があるから、季節や自分の体質、体調に合った食材を組み合わせることが薬膳。
「身近な食材がどんな効能を持っているか、知っておくだけでも全然違います。できる範囲でいいんですよ。健康な食生活を意識しすぎてストレスになると良くないので」
私も薬膳のレッスンに通っていますが、いつも久美子さんは「簡単じゃないと続けられないでしょう?」と言います。
各メニューのレシピも、びっくりするほどシンプルな調理法ばかり。
薬膳教室には、20代から70代の方まで幅広い年齢層の方が通っていますが、みなさんきっとこの、良い感じに力の抜けた雰囲気に惹きつけられているんだろうなあ…と感じます。
3.楽しい未来を、信じる
「でも、どんなに食事に気を遣っていたとしても、不安や悩みが大きすぎたら不調は治らないんですよ」
と久美子さんは言います。
そこで久美子さんの、悩んだり不安になったときの対処法を聞いてみました。
「旅行に行くこと!美味しいワインと料理を堪能すること!」
そして「友人といろんなことを話すこと!」なんだそう。
友人たちとの会話の中で一番好きな話題は“未来の話”
小さい頃から先の楽しみを思い描くことが好きだった久美子さんは、デパートの寝具コーナーに行っては「こんな部屋で過ごしたい!」「ここにこういう家具を置いて…」と、想像を膨らませてワクワクしていたそうです。
「私、この間“自信を持つ”という意味がわかったような気がしました」
SNSが普及し、色々な人の活躍やライフスタイルが目に入るようになり、刺激をもらうと同時に、無意識に比べてしまう自分もいたと言う久美子さん。
「私、このままのペースで薬膳教室をやっていて大丈夫なのかな?」
「生徒さんをもっと増やしたほうがいいのかな…?」
あれこれと悩んでいたある日のこと。ヴァイオリンをたしなむ生徒さんと話していた時に、とあることに気がつきます。その生徒さんは何十年も病気に悩まされ、思い通りに指が動かなくなっていました。久美子さんと同じ病気だったそうです。
「私、その方に自分の体験をお話ししました。そしたら、その方の表情が明るくなったんです」
ー久美子先生も治ったんだから、私も治るかもしれない!
今、目の前にいる生徒さんと“明るい未来”を語り合うこと、それが一つひとつ叶っていく楽しさを共有すること。
「その話を聞いた時、“私はこういうことがやりたかったんだ”と確信し、今の自分でいいと自信を持つことができました」
自信とは、自分を信じると書きます。でも、今の自分に足りないものがあると感じている時は“信じる”ことが難しかったりします。
「自分に自信が持てない時こそ、“私はこうなる!”という楽しい未来を想像してみてください。その未来を信じることが“自信”につながるんだと思います」
最後に、久美子さんが今思い描いている“楽しい未来”を聞いてみました。
「昔から旅行が好きなので、日本、海外問わずもっといろんなものを見て、薬膳を通して関わりを広げていきたいと思ってます」
食も自分も、ちょっと意識を変えるだけで体調や気分が変わっていくんですね。そうやって、生きがいを見出したり幸せだと思える人が増えていく。その未来は、私が聞いても楽しい未来でした。
・・・・・・・
「その人の習慣が人生を創る」とよく言われます。あなたはどんなことを習慣にしていますか?
・・・・・・・
「and You?」のコンセプト&経緯はこちらから
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
illustratration & text by HISAKO ONO
【イラストレーター 尾野久子】
福岡県出身。映像制作会社勤務を経てイラストレーターとして独立。
想いや考え、価値を伝えるためのイラストレーションをウェディング、ショップ、医療施設、飲食店、TVなどさまざまな媒体に展開しています。
https://lifetalesbyh.com
【今回の企画についてのコメント】
さまざまなことを経験し、紡いできた「その人自身の物語」。
そのかけらをイラストレーションとして表現することで、その人の生き方や価値観を多くの人が知るきっかけになりますように。「こんな人がいるんだな」「こういう生き方もあるんだな」「この人のこの習慣、真似してみようかな」と、この記事が何らかのヒントになれば嬉しいです。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
supported by HOOD天神